トゥーレーヌ地方の中世史を総括する修道院
サン・ジャン・ドゥ・グレ修道院は、Azay-sur-Cherにおける歴史の交差点であったといえるでしょう。
ここでは、12世紀に暮らしていた修道僧らの歴史、厳粛な秩序に従順した祈祷生活、そして中世社会における彼らの立場、役目、活動などを知ることができます。また一方で、Foulques
V (アンジュー伯、フルク5世)、十字軍、テンプル騎士団員、プランタジネット家、英国王家、など多くの歴史的重要人物が利用した場所であることから、トゥーレーヌ地方の中世史の、いわゆる「概括図」を学ぶことができます。
また、これまで放置されていたこの地を、近年に入ってから(1927年以降)再興させるべく情熱を注いだのはRaymond
Darrase(レイモン・ダラス 現在の所有者の父親)で、彼は大々的な復興工事を実行し、またその中で地下に潜んでいた墓地を発見するなど、彼による功績は非常に見ものです。
壁に彫られたいたずら描きのような不思議な絵
1163年から修道院として建築が開始され、その一番最初の外観は600年間保たれていました。18世紀末のフランス革命期、1791年にこの土地を農業用地として利用する目的で、幾人かの買い手によって買収されました。
修道院であった時代に建てられた多くの部分は、宗教戦争による被害で崩壊されましたが、幸運にもいくらかは現在まで残存しています。特に、修道僧の共同寝室の外壁に残る壁画は、サン・ジャン・ドゥ・グレ修道院の見所のひとつです。いたずら描きのような、岩に彫られた大量の壁画は、1791年以降の小作人や農民によって描かれたと考えられ、農業関係のものを描いたものが大部分です。更に興味深いことに、壁の基盤に発見された絵には、15世紀の日付が刻まれており、こちらは「覆面をつけた虐待者が信者を苦しめる図」や、テンプル騎士団の絵が描かれています。
アーティストSarkisと歴史深い修道院のコラボレーション
アーティストSarkis(サルキス)による現代アートもここの見所のひとつです。
イスタンブール出身、イスタンブール美術大学で室内建築学を学び、フランスに居を移して以降は、主にガラスを利用した制作活動を行い、国内各地で活躍しています。
今回のSarkisのコンセプトは「サン・ジャン・ドゥ・グレ修道院の覚醒」 。
修道院内の39の窓にはめられたステンドグラスと、鐘塔に吊るされた鐘のように室内に吊るされた20の僧衣。Sarkisの現実的、且つ想像力あふれる見解は、歴史の中で失われたサン・ジャン・ドゥ・グレ修道院の「過去」を、今日再びよみがえさせます。